子どもたちは世渡り上手にならざるを得ません。
瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」文藝春秋
本屋さん大賞ってご存じでしょうか。全国の本屋の店員さんがいちばん売りたい本を選ぶというものです。売り場からベストセラーを作るというコンセプトのもと一次予選で全国493の書店から623人の店員さん、二次審査は308の書店から371人の店員さんが1位から3位までを理由とともに投票するというもので、その投票を点数化して最高得点をとったものが大賞となります。
ちなみにこの大賞には賞金はないのですが、何しろ本が大好きな書店員さんが選ぶだけに、受賞作はベストセラー間違いなしで、大多数が映画化されています。2004年から始まったのですが、過去の受賞作をざっとご紹介しますと昨年が、辻村深月「かがみの孤城」その前が恩田陸「蜜蜂と遠雷」、順に遡りますと宮下奈都「羊と鋼の森」、上橋菜穂子「鹿の王」、和田竜「村上海賊の娘」、百田尚樹「海賊と呼ばれた男」、三浦しをん「舟を編む」東川篤「謎解きはディナーの後で」、うぶ方丁「天地明察」、湊かなえ「告白」、伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」といった具合ですが、いかがですか。映画化されたものも多く聞いたことあるような作品ばかりでしょう。 今回ご紹介する「そして、バトンは渡された」は今年の本屋さん大賞受賞作です。
まずはいつものように、作者の瀬尾まいこさんのプロフィールです。1974年1月大阪市生まれといいますから、現在45歳ですか。旦那さんと5歳の娘さんとともに奈良市に在住です。大谷女子大学卒業後、中学の国語科講師の傍ら執筆活動をされていました。その中で01年27歳のときに「卵の緒」という作品で坊ちゃん文学大賞を受賞されて作家デビューです。05年には「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞を受賞。この2作品は映像化もされています。同年、教員採用試験に合格して作家と公立中学の国語科教員の兼業をしていました。在職中の09年には「戸村飯店 青春100連発」で坪田穣治文学賞を受賞されています。11年に教員を退職してからは主婦の傍ら作家をしておられます。
さて、作品紹介です。子どもの姓、苗字ですね、これが変わるのはどんなときでしょうか。ふつうに考えれば親が離婚したり再婚したとき、養子縁組したときなどでしょうか。本作品は主人公の17歳の少女森宮優子が幼くして母を亡くし、血のつながらない親の間を渡り歩き、父親3人に母親を2人持ち、都合4回も名字が変わる中で育てられた女子高生の成長する姿を描いた家族小説です。一人の女の子にいろんな大人たちか血がつながっていたり、長い時間であったり短い時間だったり、いろんな立場でありながら親として関わっていく様子が描かれています。それでいて優子ちゃんはいつもハッピィなのです。
と、とてもいつもの私の紹介としてはとても少ないですが、これ以上はネタバレしまくりになりそうですのでご紹介できません。読んでいただければ、どういういきさつで主人公である優子ちゃんの親や苗字が変わることとなったのかご理解いただけます。とにかく読んでみてください。
もちろん、ラストはに向けて感動有り、思わず涙です。来年あたりに間違いなく映画化されるであろうことが予測されています。本日、ご紹介したのは瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」文藝春秋から2018年2月22日発刊、ソフトカバーで372頁、1728円でした(了)。

私の一冊について
福岡県弁護士会所属 弁護士 中山栄治が、日々の読書感想やゴルフ体験を綴ったコラムです。