スコットランドゴルフ紀行(3)
番外編
オススメの一冊から脱線して,はや今回が3週目となりました。ご心配に及ばず,オススメする本を探して現在いろいろ読んでいるところですので,いつでもその気になれば復活できそうです。併せて,こちら紀行文はまだ旅程3日目ですのであと5,6回はいけそうです。読まれて,少しでも笑顔になっていただければ幸いです。

7月5日(日)セント・アンドリュースの朝。今朝も5時前に日の出とともに起床です。ニューコースのスタート時間は7時15分ですが,BBから車で10分もかからないので余裕です。今朝も朝食前に同室のよっちゃんとお散歩です。少し足を伸ばして,近隣の史跡を見物することにしました。ところが,まだ朝早過ぎて,聖堂,タワー跡の入場門はいずれも閉ざされていました。さすがに塀を越えて失礼するわけにもいかず,ちょっと離れて外からしか見れませんでした。この朝は霧がかかっていました。霧の中,解放されている廃墟や墓地に立ち入り,古い墓銘を確認しながら歩きました。セント・アンドリューズ大学の校有地や民家が立ち並ぶ路地にも入りました。「for rent」の張り紙のされた古いアパートもあります。共通しているのは,どの建物も古い煉瓦造りで優に築100年以上が経過しているのではないかということでした。ついでに商店街まで歩いていたら,この時間にオープンしているスーパーを見つけ,覗いてみました。品揃えが豊富で,キッコーマン醤油までありました。いろいろ品定めをして缶ビール1ダースをレジに運んだところ,販売拒否されました。私が未成年に見えるはずもないし,どうしてか聞いてみたら,どうも法律でアルコール類の販売は午後5時までは禁止されているみたいでした。要するに,そもそもスコットランドでは酒飲みが多い,だからアル中も多い,昼間から酒を売っていたらさらにアル中だらけになる,なるほど,これを防止しようとしているんだな,とひとり私は納得しました。昼間やっているバーではアルコール類を呑むことが出来ましたので,私が生きていくことに何ら不便もなく潔く引き下がったのでした。本日の散歩も終盤にさしかかり,通りで偶然にも作どんに出会いました。聞けば,椛ちゃんはまだ寝ているので寂しくも1人散歩です。合流してあげました。

宿に帰り,朝食のメインは昨日と違うものを頂きました。大豆ではないけれど種類はわからない豆を煮たものでこれも良かったです。朝食に現れた椛ちゃんは,今日もお目覚めが遅いようで,勿体なくも普段,朝は食べないそうで,フルーツだけ食べていました。食後,4人ははやる気持ちを押さえて,ニューコースへと出発しました。

今日のキャディも昨日と同じ人が付いてくれました。昨日,帰りに気づいたのですが,キャディさんはベンツなどの高級車でクラブハウスまで来ており,聞いてみれば,仕事は別に持っていて,暇なときにバイトでキャディをしているとのことでした。キャディとして付くのは日本人やリッチアメリカンだそうです。キャディ自身,ゴルフの腕前は,いずれもシングル級とのことでした。積極的にキャディとの英会話を楽しんでいた作どんによれば,「ここは,田舎だし小さい頃から遊びといえばゴルフとサッカーばかりしていたので,シングルになるのは当たり前」とのことです。30過ぎて,はじめてクラブを持った私らとは,所詮,環境が違います。されど道のりは如何に遠くとも,私もいつかシングルになりたい!
さて,今日のゴルフです。空は晴れてはいるものの,海からかなりの強風が吹いています。さすがはシングルの腕前のキャディさんです。昨日のワンラウンドで私の実力を見切ってしまったのか,ティーショット,セカンドも含め,私の使うべきクラブを勝手に決めて差し出してくれます。例えば私が,自慢の流暢なクイーンズ・イングリッシュで「えっと,えいと あいあん ぷりーず」と言っても「No,this one」と応えて,違うクラブを差し出すのです。はじめは私の方こそ「のう」と言って,自分の好きなクラブを要求していましたが,そのうちに彼が差し出すクラブが正しいことに気づき,言われるとおりにしていました。なのになのに,ふとこれを書きながらニューコースでの私のスコアカードを見てみれば,まじ,人に言いたくないくらい酷いスコアです。1ホールで7とか8とか9とか,極めつけは17番ショートでは11も叩いています。この日のパーはわずか3つだけ。はい,アウト51イン55の106でした。意外にも作どんが90くらいで回っているのが悔しいやら。いずれ今日のゴルフも散々でした。オマケに耳にした英語が,いかほどか理解できるよっちゃんによれば,私とよっちゃんのキャディは,我々ふたりを馬にして握っていたに違いないと言います(おわかりかとは思いますが,わかりやすく説明すると,ふたりのキャディは,昨日で我々ふたりの力を大差ないと見て,今日のふたりのプレイを対象にして,ホールごとにどっちが勝つかを賭けていたというものです,さすがはギャンブルの本場,英国)。よっちゃんによれば,ふたりのキャディさんの間では,超訳して以下のようなシンプルな会話があったそうです。
私のキャディ「おっ,ナイスショット,(よっちゃんの)今のショット良かったじゃないか,こりゃあ,やっぱいい勝負だなあ」よっちゃんのキャディ「何言ってんだよ,今のはたまたまのまぐれだって」残念ながら,確かに,私とよっちゃんの勝負はほぼ互角でした(正確には,ホールマッチで私のワン・ダウンで負け)。キャディさん,あんたらはエラい。

話はうって変わって椛ちゃんです。実は,椛ちゃんのだじゃれは天才的(?)とさえ言われ,同行の私たちをあきれさせたもんですが,あまりにも程がある椛ちゃんのだじゃれ攻勢に対して,とうとう周囲は辟易として,女性からはそれ自体セクハラとさえ言われていると聞いたことがあります(椛ちゃんごめん)。このだじゃれ,スコットランドでも衰えることがありませんでした。まず,キャディさんとの自己紹介で「あいむ ひっぽぽたむす(英語で動物のカバのこと)」と言っては笑顔を振りまき,ミスショットでグリーンの自分のボールがピンから遠ざかってしまうときには,「すとっぷ ざ せさみん(止まれ,ゴマ)」と言ってボールを指さしてみたり・・・ホント大変でした(汗)。
とまれ,今日のゴルフは終わり,BBへの帰路へと就きました。これから,作どんはバスで数時間離れたところに住んでいる高校時代の友人に,短い日帰りで会いに行きます。当地の学校の先生と国際結婚をされてこっちに住んでおられるとのことでした。残った3人は,宿泊すると滅茶苦茶高そうなオールドコースホテルでランチして,後は,思い思いに過ごすことになりました。椛ちゃんはお昼寝。よっちゃんは,日曜なので一般に立ち入り自由とされている憧れのオールドコース巡り。私はゴルフショップを覗いて,テーラーメイドのドライバーを新調し,早速プラクティスセンターで打ち込みです。
作どんが留守の中,夜はよっちゃんリサーチの海辺にあるシーフードレストランへと向かいました。ところが,店は閑散としていて暇そうなクセして,予約なしでは無理と言われ素直に撤退。またまた,街を彷徨い適当にインド料理の店に入りました。当地に来るまでは,イギリスは食が不味くていけない,はずれがないのは,中華とインド料理だけとの情報は役立ちました。本当のことを言うと,メニューに載っている料理の正体ははっきりとは理解できなかったのですが,チキンやらビーフとかの記載をもとに適当に注文して,これに今夜もたくさんのビールとで舌鼓を打ちました。シーフードを食べれなかった悔しい想いも残ったけれど,インド料理もとても旨かったです。この夜が,セント・アンドリュース最後の夜です。食後はバーで飲み直しと行きたいところでしたが,やはり3人は,よい子としての自覚を保ち,惰眠を求めて早々と宿へと向かったのでした。この夜,クーラーのない部屋は暑いので窓を開けたままにしていたのですが,日曜にも拘わらず,近くのバーで飲んでいたセント・アンドリューズ大学の学生たち(?)がどういうわけか騒がしくて,寝苦しかったのをよく覚えています。

翌日は,午前中,セント・アンドリュースを観光して,その後,車で小一時間移動して全英オープン開催の地のひとつであるカーヌスティーへ向かいます。ゴルフの予定は,まずは道程の途中にあるパミューア・バレー・ゴルフクラブで14時30分スタートとなっていました(つづく)。

私の一冊について
福岡県弁護士会所属 弁護士 中山栄治が、日々の読書感想やゴルフ体験を綴ったコラムです。