スコットランドゴルフ紀行(6)
番外編
7月8日(火)旅程6日目,ゴルフプレイ6ラウンド目の朝。海辺の町カーヌスティから内陸部西へ中世の風景の中を横断して,パースの町を経てさらにここから約20㎞,レンタカーで行程約1時間半ばかりで,英国人憧れのハイステータスなハイランドゴルフリゾート,The Gleneagles Hotelに到着です。ここにはホテルと3つのゴルフコースがあります。King Course,Queen Course(Queenはもともと女性用に造られました)ともに,奇遇にもヴェルサイユ条約(第1次世界大戦のパリ講和条約)締結の年である1919年にオープンしています。これに遅れること4年,ホテルは1923年(日本では関東大震災が起こった年ですね)にオープン。ホテルに隣接してゴルフコースがあるほか,テニスコートはもちろん,かなり距離のあるジョギングコースにサイクリングコースまであります。さらに70年の時を経て1993年,ジャック・ニクラウス設計により第3のコースであるThe PGA Centenary Courseが開設されました。古い2つのコースは伝統的な自然の起伏を活かしてのコースであるのに対して,ニクラウスの設計は人工的なアメリカンテイストで,絵的に美しく戦略性が重視されています。確かに森と緑の調和があり,ビジュアル的に美しいコースでした。ここGleneaglesのゴルフコースは山間コースであって,リンクスではないので,全英オープンの開催コースとはなりません。しかし,ヨーロピアンツアーでは重用されており,1921年にライダーカップ(ゴルフのヨーロピアンツアーとアメリカンツアーの代表選手によるマッチプレー対抗戦)がはじめて開催されたコースとして有名で,2014年もここが開催地とされることが既に決定しています。

ホテルは2005年,世界主要国首脳会議(G8 Summit)の会場にもなったほどのハイクオリティで,スコットランドでも1,2の人気のあるリゾートホテルです。この会議には日本からは小泉首相が出席しており,ホテル内には小泉さんを含む,時の出席者の集合写真が掲示してありました。

セント・アンドリュースでは,チャイニーズに間違えられた謎のオヤジ4人組は,たぶん最後の贅沢の締めくくりとして,この憧れのホテルに1泊して,PGAとKingの二つのコースを回ります。

到着してまず,ホテルの建物そのものの外観に圧倒されました。くたびれオヤジには似つかわしくない,上流階級の社交場という感じで堂々としていて格式も高いのです。さらにホテルのロビーでその高級さにびっくりです。もちろん天井がとても高くて優雅で重厚な感じです。確かにドレスコードがありそうですが,リッチなアメリカ人とおぼしき若者が短パンにTシャツ,素足にスニーカーだったのには驚きでした。たぶんドレスコードが適用されるのは,レストランやバーなどで,ホテルロビーは関係ないんですね。私たちが到着したのはお昼前でしたのでチェックインにはまだ早く,荷物をクロークに預けて,ゴルフのクラブハウスに向かいます。今日は,新しい方のPGAコース14時30分のスタートです。時間はかなりあるので,クラブハウスで軽くクラブサンドを頬ばり,食後は練習場に行って打ち込みです。ここのドライビングレンジは300ヤード近くあり,充実していました。体も温まり,さあスタートです。私の意に反して今日も1人ワンキャディです。PGAコースは全長6366ヤードとそう長くないのに,ロングホールが5ホールあってパー73です。この日もひたすらゴルフを楽しみました。特に椛ちゃんは深く切り立ったバンカー内で,直接グリーンを狙って失敗,トライ,失敗を繰り返し,断念,最後はグリーンとは逆方向を向いて打っていました。結局,バンカーだけで7つくらい叩いて自分で打数がわからなくなっていたのが印象的でした。はい,同伴者として私がしっかり数えていたのでお教えしました。私のスコアは,パー3つにバーディーをひとつ取って,いつものOB2発で,アウト48イン54の102でした。またまた作どんが90前半で回っているのには納得がいきませんでした。実は,こちらに来てから毎日のゴルフは,英国の紳士に倣って,アマチュア精神に反しない程度に4人総握りだったのです(賭けていたということ)。もちろん,ハンディをつけての勝負です。作どんは私からハンディをもらっておきながら,いわんやハンディがなくたってほとんど毎日のように勝っており,それはご機嫌でした。対して,椛ちゃんはたとえ負けが込んでも,そこはそれ,年長さんらしく大人しく微笑んでらっしゃいました。ゴルフって本当に性格が出るんですよね。ちょっと話はそれますが,私のゴルフ仲間には,ミスショットを重ねて,とても悔しいときに(誰だって悔しいけれど我慢するんです),クラブを鍬がわりにしてラフに力一杯打ち付けて耕し,ラフを耕す際に力が入りすぎて,クラブを折ったり曲げたり,自分の肘を痛めたりする人もいます。もちろん,いくらゴルフが大地相手のスポーツといっても,ラフに八つ当たりするなんてマナー違反も甚だしいですよね。よい子は絶対マネしないでくださいね。

夕方,ゴルフも終わりいよいよ豪華ホテルにチェックインです。部屋割りはこれまでと同じです。一歩部屋に入り,その広さと造りにびっくりです。1階でしたが,大きなベットに40インチくらいの大きな液晶テレビが二つあります。広いバスタブの他にシャワールームもあります。ホテルのロゴ入りの厚手のバスローブ,歯ブラシや髭剃りのほか,化粧箱に詰められた諸々のアメニティグッズがあります(化粧箱の中身はもちろんお持ち帰りしました)。ふとテラスに出ると,そこから庭先に出ることができました。よっちゃんと記念撮影をして部屋の雰囲気を満喫しながら,ゴルフの汗をシャワーに流し,お待ちかねの高級ホテルでのディナータイムを迎えました。怪しいオヤジ4人組はこの夜のために持ってきたジャケットを着て,加えて作どんは念入りにタイまで締めて,ミシュランお勧めのホテルレストランを目指します。ところが,なんてこった。がっくし。かのレストラン,何とこの日はクローズしていたのでした。納得がいかないながらも仕方なくホテル内を見回り,開いてる店では最も高級そうでしたが,ドレスコードはなさそうなオープンスペースのレストランに入ることになりました。そこでフレンチやイタリアンのアラカルト等をつまみに,ビールとワインを大量に消費しました。味は日本のレストランとさほど変わらず,まあまあでした。食後はさすがに,「わざわざジャケット持ってこんでも良かったやん」と言われないためにも,既に目をつけていた高級そうなバーに河岸を代えて飲み直しです。ここはさすがにドレスコードがありそうでした。もちろん,ここはスコットランドです,バーでは,しがないオヤジでも当然スコッチを,それも007をマネてショットで注文します。このバーには100種類を超えるスコッチがありそうでした。作どんは,本来,お酒を余りたしなまれないのですが,スコッチをショットでちょっと,ちびちびと1杯も飲み終わらないうちに,1人掛けのソファーで気持ちよさそうにうとうとし始めていました。ここでの支払は割り勘と聞いていた私は,高そうなシングルモルトのマッカラン,ボウモアにラガヴァリンと立て続けに,ジェームズ・ボンドのように勢い良く飲み干して,気持ちもお腹も一杯になってとてもしあわせでした。

明日は,本行程最後のラウンドをKing Courseスタート08時50分でプレイして,エジンバラ空港まで車で戻り,空路ヒースローへ飛びロンドン入りです(つづく)。

私の一冊について
福岡県弁護士会所属 弁護士 中山栄治が、日々の読書感想やゴルフ体験を綴ったコラムです。